ある会社において、自分の好みの食事に関するアンケート調査を行ったところ、A、B、Cのことが分かった。これから確実にいえるのはどれか。ただし、どの食事も少なくとも1人は好きな食事として回答した人がいた。
A ラーメンとすしが好きな人は、カレーライスも好きである。
B ラーメンも焼肉も好きでない人は、すしかピザが好きである。
C 焼肉が好きな人は、カレーライスもピザも好きではない。
1 カレーライスが好きな人は、焼肉が好きである。
2 ラーメンが好きな人は、焼肉が好きである。
3 すしが好きでない人は、ラーメンも焼肉も好きである。
4 ピザが好きな人は、焼肉が好きではない。
5 ラーメンが好きな人は、カレーライスが好きである。
この問題は、平成17年度に国家T種試験で出題された問題です。
このような形式論理・集合の問題は近頃ははやっていない気がしますが、典型問題なので、一度はあたってみる必要があると思います。
まず、論理と集合の問題で、私が必要と思うものを7項目にまとめます。
@「A⇒B」ということとベン図
A⇒B(AならばBと読みます。)をベン図ではこのように描きます。
図1
Aに入っていれば、必ずBにも入ってしまう関係です。ベン図でAがBにはみ出さずに含まれていれば、「AならばB」となります。
また、注目して欲しいのは、外側に□の線があることです。これは全体(世の中全て)を表します。集合の世界では、このように世界に限りがあると考えた方が分かりやすいです。
また、高校生に数学を教えるときは、私は「AはBであるための十分条件ですよ」「BはAであるための必要条件ですよ」と話します。用語として必要になるからです。でもこれってややこしいですよね。そこで、Aを「大阪市」、Bを「大阪府」に置き換えて説明しています。地図上の位置関係はこのベン図と一致しますよね。
図2
ここで、大阪市の友達に手紙を出すことを想像してください。宛先に「大阪府」から書き始めてももちろんよいのですが、実際は面倒だから「大阪市」から書きはじめませんか?
なぜなら、それで「十分」に住所が分かるからですよね。これを「A:大阪市」であることは「B:大阪府」であるための「十分」条件というのです。
また、大阪市に郵便を届けるためには、絶対に大阪府に入らないと届けられませんよね。つまり、大阪市に郵便を届けるためには、少なくとも大阪府入ることが「必要」なわけです。
そこで、「B:大阪府」は「A:大阪市」であるための「必要」条件というのです。最低限必要になる条件というイメージでよいと思います。用語は問題を解く上では必ずしも必要ではないと思いますが、知っておいて損はないでしょう。
A三段論法
ややこしいことは不要です。「A⇒BかつB⇒C」ならば「A⇒C」と言えるだけです。しりとりです。さらに「C⇒D」も言えれば「A⇒D」です。いくらでも続けられます。
B否定
「Aでない」とは、(Aバー)とAの上に線を引いて書きます。
ベン図では、下図のように、Aではない全てを表します。
図3
また、二重否定「「Aではない」ことの否定」は「A」です。「」ということです。
あまり意味を考えず、ルールだからそんなもんかと割り切るのが得策だと思います。
C対偶
めちゃくちゃ重要です。これを知らないとまず正解にはたどりつけません。
「A⇒B」の対偶とは「」になります。
ここで超重要な性質があって、「A⇒B」であると言えれば必ず「」であると言えます。覚えればOKですが、納得いかない人もいると思いますのでベン図で示しましょう。
図4
「A⇒B」であると言えれば、図1のように、AがBの中に含まれている状況でしたよね。
ここでとを見てみると、は図の斜線部、は図の黄色の部分になります。
の黄色の部分は、の斜線に含まれているのが分かると思います。つまり、「」であるということなのです。
試験で「A⇒B」という条件が与えられれば、即、「」とメモを書いてください。全部の条件に対偶をとるのは無駄なのでは?と思われるかもしれませんが、頭を使わず作業をした方が結局は早いです。左右を入れ替えて、バー・バーと書くだけなのですから。
D「かつ」と「または」
「かつ」の記号は∩、「または」の記号は∪です。
図5
図では、斜線が引かれている部分が「A∪B」、Aの斜線とBの斜線が交わっている部分が「A∩B」となります。
Eド・モルガンの法則
・・・@、・・・Aの2つの公式をド・モルガンの法則と言います。(証明は省略しますが、図5のようなベン図を使って必ず御自身でやってみてください。同じ部分となることが分かると思います。小さな感動がありますよ。)
「かつ」や「または」だけでも大変なのに、なぜその否定まで考えないとならないのかと思われるかもしれませんが、それはずばり、対偶をとるからです。対偶をとれば必ず否定が出てきます。問題文に「AかつB」と出てくれば、それの対偶をとれば、「AかつBの否定」が出てきてしまうのです。
ド・モルガンの法則も、使える形が出てくれば、即、メモを書いてください。「バーを切り離したら∩と∪が入れ替わる」これだけです。全部は使わないでしょうがが、全てメモをするのです。パーツが足りないより多すぎる方がはるかにましです。
F「A⇒A∪B」
まず声に出して読んでください。「Aであれば、AまたはB」。当たり前ですよね。
でもこれをよく忘れるのです。対偶をとって、ド・モルガンを使ってバーを切り離したら、∪や∩がでてきます。その時に、しりとりができないなあと思わず、あっそうかと気づいてください。
同様のものに「A∩B⇒A」があります。こちらは気づきやすいでしょう。
以上が私が必須だと思う7つの項目です。
では実際に解いてみましょう。
A ラーメンとすしが好きな人は、カレーライスも好きである。
B ラーメンも焼肉も好きでない人は、すしかピザが好きである。
C 焼肉が好きな人は、カレーライスもピザも好きではない。
を、すぐに記号で表します。
ラーメンが好きな人を「ラ」、ラーメンが好きではない人を「」などと表します。
A:ラ∩す⇒カ
B:
C:
次に対偶をとり、右側にメモしていきます。またド・モルガンを使ってバーが切り離せる場合は、それもついでにメモします。二重否定は肯定に直します。
A:ラ∩す⇒カ A対偶: Aドモ:
B: B対偶: Bドモ:
C: C対偶: Cドモ:
ここまでこれたらあとは「三段論法」つまり、しりとりをするだけです。項目Fに注意です。
1.(Cドモより、結論が逆→×)
2.ラから入れるものがないので、置いておく。
3.から入れるものがないので、置いておく。
4.(Cドモより→○)
5.ラから入れるものがないので、置いておく。
以上より、正解は4です。
めんどくさがらずに、対偶、ド・モルガンのメモをさっと書いてください。単純作業ですから試験では2、3分くらいでとけるようになると思います。逆にパーツが足りないと、絶対に回答にたどり着けません。
こうしてみると、形式論理の問題があまりはやらない理由が分かります。作業慣れすれば、できてしまうので、頭の良さをテストすることが難しくなってきているからではないでしょうか。
しかし、演繹的に物事を導くことは論理の基本ですから、きちんとおさえる必要はあると思います。ではまた。
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